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野良猫のアルには、この土地にやって来たのは理由がある。
此処はかつて、約100匹もの部下猫を率いたごろつき猫のゴロとアルの舎弟猫を殺された落し前を付ける為に、100+1対1の果し合いをした、あのスクラップ工場があった空き地が近くにあった場所だ。
あの落雷のスクラップ工場火事の後、スクラップ工場や空き地が無くなり今は、マンションや住宅が次々と建設されている土地となった。
野良猫のアルは目を閉じて、あのごろつきのゴロとの壮絶な闘いを思い出していた。
・・・・・・
・・・・・・
落雷が直撃して炎に包まれる廃車の山の中。
ガラガラガラガラガラガラ・・・
ドシャーーーーン!!
「もはや・・・駄目か・・・!!」
次々と崩れ落ちていく廃車の残骸に囲まれて身動きが取れなくなったアル。
ばぁっ!!
その時だった。
残骸の山を飛び越えて、敵の筈のごろつき猫ゴロが八方塞がりのアルの前にやって来たのだ。
「アル!!お前を助けに来た!!ここに居たら死ぬぞ!!俺に付いてこい!!」
アルとの喧嘩で痣だらけのゴロは、その痛みを堪えているとは思えない、鋭い眼光で、命乞いをするアルを見詰めた。
「ゴロ・・・おめえ・・・」
アルはヨロヨロと立ちあがり、ゴロは「付いてこい!」と言わんばかりにスクラップの山を悠々と飛び越えて、何とか燃え盛る廃車の山から逃れる事が出来た。
だが・・・
「俺の完敗だ・・・お前は此れからも、野良猫の生き様を貫け・・・」
ばたん・・・
ごろつきのゴロは、アルにそう言い放つと、力尽きるようにその場に倒れた。
「ゴロ・・・ありがとな・・・」
アルはぐったりとしたゴロを担いで、お腹にゴロの子を宿した妻の三毛猫のミイの前に持っていった・・・
その時の、ゴロの妻のミイの止めどなく流れていく涙が、アルの心をグッと掴み、感極まってアルも涙を流した・・・
・・・ゴロ・・・
アルは、目にうっすらと涙を流して白いパンの様な雲が流れる青空を見上げた。
・・・ゴロ・・・
・・・思えば、あいつらしい死に方だった・・・
あの喧嘩の後、野良猫のアルは二度とゴロの前から姿を表すつもりでは無かった。
アルは流浪先で、他の猫達の噂を聞いた。
約100匹もの部下を持つごろつきのゴロ。
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