プロローグ

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しかし、いくらいつもより吸飲速度が遅いと言っても毒が身体を巡るには十分な時間であり、いいかげん味が変わってもいいころだ いや、そもそも最初からこの女の血は恐怖の味さえしない、始めからずっと同じで飲み込みがたく非常に不味い そんなことを考えていると、遠くから新たな人の気配がした 「ママ~、どこぉ~?」 ぴくりと身体が小さく反応すると同時に口の中の味が、一瞬にして変わるー ドンッ! 「ごめんなさい、やっぱり今はまだ無理だわ、いかなくちゃ…」 血の不味さと急な味覚の変化が隙となっていたため不意をつかれ、ただの人間の女のか弱い抵抗でいつもでは考えられないことだが思い切り突き飛ばされた 女はくるりときびすを返すと、まっすぐ声のするほうへ、俺の存在など最初からなかったように一度も振り返らずにかけていった… その場でしばらくあっけにとられていたが、急に牙が離れたことで口から垂れる血液と唾液を拭ったとき気付いた 袖が大きく引き裂かれ当然中の腕も肉が引き裂かれ骨にヒビが入っていのが目視できる位のものだった傷口、 今や綺麗にまるで何事もなかったのように袖の隙間から白い腕がのぞいている あんなに不味い血で飲み込むことさえ困難だったのに、身体の反応は真逆でまるであの血を体内に取り込めたことに喜びさえ感じているかのような凄まじい回復力だ     
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