第一章

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ようやく目が開く、でもまだよく見えない、とにかく喉がカラカラだ、 「みず…」 ぷしゅっと枕元の水を開ける音、 ペットボトルを渡されると思ったら、唇に冷ややかな感触がしてそのまま流れ込んでくる (さっき見た夢にもあったな、まだ続きを見てるのかな) だんだん視界と意識がはっきりしてくる 「全部夢だったらよかったのに」 ゆっくり起き上がる、私を支える腕 タオルがずれて前は全開どころかタオルが落ちた部分しか隠れてない でも、そんなのどうでもいい、彼の手の中のペットボトルを奪って一気に飲み干す (もう限界だ) 子供達にまた会いたいがために全部耐えていたけど、先程からの刺激と疲れで興奮して自分を止められない 「いい加減にしてよ」 思ったよりも声がかすれてうまく出ずに、呟くようになってしまった 「何なの?」 「あんただれなの?」 「もういい加減にして!」 「私に触らないで!」 「こっち見ないで、どっか行ってよ!」 「同じ空気も吸いたくない」 「きもちわるい、だいきらい、」 「出ていってよ…!」 男を傷つけ罵る言葉が止まらない 男の動きが完全に止まって、私に釘付けになって息さえしていないようだ ただ、私を見つめるその綺麗な瞳だけが、私の言葉の度にゆらゆらと揺れる (あなた変質者なんでしょ?何でそんな傷ついた顔してるの…?) やめてよ、私が意地悪してるみたいじゃない、ひどいことされてるのも泣きたいのもこっちだ その瞳に耐えきれず、視線を外して空のペットボトルを男の足元に投げつける 静かに男がペットボトルを拾いながら立つ 反射的にビクッとしてしまう、怖くて顔を上げられない、 (あぁ、もう終わりだ、もう子供達に会えないんだ) 私の予想に反して、男の気配が遠のき、リビングのドアを開けて出ていく ウィーン、ガシャ、電動ロックが解除され玄関ドアが開く音がする ビュービユー風の音がしたかと思うと、パタンとドアが閉まりまた電動ロックがかかる音がするー
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