第一章

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寝床へ帰って、ベッドの上に持っていたものを置き、雪のせいで濡れて重くなった洋服を脱ぎ捨てる 先程までは暖かった体はもはや氷のように冷たいが、人間のように霜焼けや凍傷になったりはしない、 だけど、寒さは孤独感を増幅する 毛布にくるまって、自分の都合のいいことだけを考えようとする 心が痛みすぎた時の逃避だ ふいにそのまま持ってきたペットボトルが目に入り手を伸ばす 俺たちは犬よりも鼻がいい、キャップがついていない口からは彼女の芳しい匂いがする (イイ匂い…) たまらず、ソコを舐める (甘い、彼女の味がする) たちまち身体が熱くなり昂る もっと欲しくなって目を瞑りさらに舐め回す、そして昨夜彼女にした事を思い出すように自分を刺激する 彼女が握っていたペットボトルの腹に噛みつく ぐしゃっと大ききな音を立てて穴が空きながら潰れる 心も身体も彼女でいっぱいで苦しい、彼女への熱と思いが耐えきれず放たれる 自分で呆れてクッと鼻をならす、 その時唇が触れたことによってようやく気付く (もう、牙が再生してる) 昨日自ら捨ててしまった牙が再生したことはとても喜ばしいことのはずなのに、昨日の痕が消えてしまったようで少し心が萎む これ以上彼女の痕を消したくないので、固く瞳を閉じてしばらく眠りにつくことにしたー
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