第一章

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私はよく寝ぼけてそれを覚えていないことがあるけど、お酒に弱くても全ての記憶が飛ぶことはない もちろん完全に覚えている訳じゃないけど、ベッドで目覚めた時の男の態度や私の言葉に瞳を揺らす表情からも、昨日の夜あったことは無理矢理じゃなかったんだと思う 自己嫌悪で目がにじむ 一人でお酒を飲んでいたはずで彼とどう出会ってあのような経緯になったのかはわからない、でもまだ一年しかたってない、 よりによって彼の命日に、今じゃ名前もわからない男とそういう関係になってしまうなんて、 不貞もいいところだ、お酒を飲んでいたからって言い訳しようなんて気にもならないし、今じゃ彼はいないからできもしない 自分の貞操観念がこんなに緩いとは思わなかった、まさにあばずれってやつだ 汚い自分の心を流してしまいたくて、もちろんそんなことできないのはわかってるけど、何かしないと罪悪感に押し潰されそうでお風呂に向かう 完全に冷めて冷たくなった湯船の水が目に入る、昨日は浴室暖房までついてのぼせるくらい熱かったのに今じゃ、お風呂全体が冷え冷えとしている きっとさっきお風呂が暖められていたのもあの男が私が寝ている間に、全部セッティングしたんだろう     
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