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プロローグ
「っ、まっず…」
ー 人間の血の味は感情によって変化する ー
(一体、こいつは今どんな思いをしているのか…)
今は立っているのがやっとのほどで好き嫌いをいっている場合ではない、早くこの傷を修復しなければとは頭では理解している
しかし、上手く飲み込めない、喉が自然と拒否するため全然吸血が進まない
血液独特のあたたかさも生臭ささえ感じられず、不快な鋭い渋味が舌の中心から口に広がり味覚が上手く感じられなくなる
確かに液体なのにざらざらした不快感と口当たりの悪さに口内が支配され硬度の強い液体となり上手く飲み込めない
とにかく、まずいを通り越して喉が拒否する味なんて長い人生の中で初めてである
何百年と生きてきたのに未だに初体験ができるとは人生とはやはりわからないものだと感心さえしてしまう
さらに奇妙なことに、女はピクリとも動かず牙を突き立てられているのにそれさえもないかのように大人しく、どこか遠くを虚ろな目でみつめつづけている
普通は恐怖のキリっとした味がして、徐々に唾液からの毒で吸血が快楽になりそれに溺れ、人間のアルコールのようにこちらを高揚させるまろやかな深い味になる
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