episode227 悪魔狩り

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足音もなく表れた黒い影は 鉄格子の向こうで立ち止まると――。 僕の目線まで身を屈め 犬を呼ぶように軽く舌を打ち鳴らした。 「おい、来いよ。そいつを外してやる」 それから特に抑揚もない平坦な口ぶりでそう言って 僕が身を起こすのを待っていた。 ――征司……か? どんな暗がりでもあの人を見紛うはずないのに。 僕は警戒した猫のように身をすくめしばし目を凝らしていた。 洗いざらしの髪。 身に着けている物はといえば キャンパス地のデッキシューズに 肌も露わなタンクトップと 床に引きずるようなルーズなニットコート。 トラッドの申し子のようだった人が 一言で言えばらしくない。 だけどすぐに気が付く。 それこそ全てを手に入れた人間の 策略的なイメージシフトなんだと。
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