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「入れよ」
「入れって……」
間違いなく入院患者のいる病室だ。
しかし考える間もなく
背中を押されその部屋に押し込まれた僕は――。
「あ……」
まさか
思ってもいなかった光景を目の当たりにすることになる。
「夜逃げの準備か?」
征司の声を聴くと
枕元の小さな灯りを頼りに荷造りしていた男は
「これは……」
呆然と立ち尽くしたまま
これ以上ないほど顔曇らせ僕らを見つめた。
「薄井……」
僕もまた同じように固まった。
かける言葉がうまく見つからない。
だから言った。
「思ったより元気そうだ。聞いてたよりはずっと――」
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