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違うと言われても思わず見てしまう。
「誰が真犯人か言ってやれ」
征司は腹立たしげに僕の視線を振り払い
腕組みして薄井に向き直った。
「その為におまえを生かしておいたんだ」
薄井は戸惑いながらも
己が裏切った主人の好意に素直に頭を下げた。
「おまえを襲ったのは誰だ?」
それでもなかなか口を開こうとしない。
犯人を恐れているのか――それとも。
「襲われた時は……犯人の顔は見ていません」
やがて子供の頃の記憶でも辿るように
ゆっくり薄井は口を開いた。
「襲われた時は?」
言葉尻を捉えて征司が問い詰める。
「いつなら見たんだ?」
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