episode227 悪魔狩り

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まったく我儘が――。 それでも無言の凶器が僕らを黙らせた。 傷が痛むのかそれとも主人が怖いのか 薄井は軽く唇を噛んで胸元を摩っていた。 だが沈黙は長くは続かなかった。 「去って行く覆面姿の男の後ろに――あの人を見ました」 淡々とした声音で薄井が告白する。 「あの人というのは?」 征司は指揮者が最後の音を締める時みたいに そっと指先を持ち上げた。 「――九条敬氏です」 「え……?」 導き出された答えに僕は思わず面食らう。 「おそらく、覆面男は九条氏の指示で動いていたのだと」 言葉は磨かれた槍のように 鋭く胸に突き刺さった。 「……嘘だ!」 声を上げ壁際まで後ずさるけれど 「いいえ。間違いなく九条敬氏がその場にいました」 残念ながらそれ以上の逃げ場はなさそうだ。
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