episode227 悪魔狩り

25/30

114人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「心当たりはないのか?」 征司は僕に聞いた。 心当たり――。 パリへ行こうと言った。 あの日。 『大丈夫。あの秘書の事なら任せて――』 部屋を出た僕をつけたのだろうか。 それとも もっと前から気付いていたのかもしれない。 「あるみたいだな」 征司は上目遣いに僕の表情を窺って 小さく肩をすくめた。 それから氷のような冷たい目で薄井に向き直ると 「証言できるか?」 「証言?」 「裁判でそのことを」 言った。 「お兄様っ……!」 「何だ?」 天を仰ぎ空っぽの口を開ける。 飢えた毒蛇みたいに。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加