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「この期に及んで俺に嘘をついてるってこたないだろ?」
椅子の上で体を傾ぐと
ニットがだらりと肩までずり落ちる。
「おまえに制裁を加えたのは九条敬――そうだよな?」
毒蛇は扇情的に長い首と肩先を晒して
洗いざらしの前髪を長い指で梳いた。
いつになく無防備なのに
ひどく物騒な気配。
まるで自我が目覚めたばかりの少年だ。
そこには無感情に虫の足を引き千切るような怖さがある。
「それは……そうですが……」
「何だ?言えよ」
薄井もそれを感じてるんだ。
「裁判で証言するとなると……色々不都合な点が出て来るかと……」
もともと青い顔からもっと血の気が引いてゆく。
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