114人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
耳から染み渡る
独占欲とあからさまな愛欲が僕を混乱させる。
「どうしたらいいの……僕はどうしたら……」
口をついて出る
気弱な女みたいなセリフ。
「もう、やめて……」
ヒロイズムに酔った
己の喘ぎ声がより一層
「アアッ……」
耳だけで絶頂を迎えそうなまでの快感へと導いてゆく。
そんな顔をまた
激しく関係した男に覗かれているなんて。
「任せておけよ。俺に全部――」
歪な事態が折り重なって
ますます僕を身悶えさせた。
「裁判になんてしないで……だって九条さんは……」
「大丈夫。世間に家族の恥を晒すようなことはしないさ」
「それじゃ……どうするの……?」
征司は今にも泣きだしそうな僕を宥めるように囁く。
「私刑について俺はよく考える。時と場合によってはそれも悪くないんじゃないかと」
それこそ――征司が悪魔狩りと呼んでいたもの。
最初のコメントを投稿しよう!