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触れられただけで
快楽の底無し沼に引きずられそうになる。
だけど何にだって逆らうのが僕だ――。
「それ以上勝手にしたら……舌を噛んで死にます」
「何?」
振り向きざま吐き捨てて
本気だと証明する為に僕は唇の端を噛み切った。
「よほど血生臭い話がしたいらしいな」
征司は行き過ぎた悪戯をした後の子供みたいな顔で
面倒臭そうに舌打ちし僕を睨んだ。
「天宮の当主になったからって何でも思い通りになるとお思いなの?」
思った以上にきつく噛んだ。
言葉を発する度
生温かい血液がじんわりと滲んで。
「ごめんだよお兄様――僕はごめんだ」
ただでさえ赤い僕の唇を
さらに真っ赤に染めてゆく。
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