第一話脚本

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③模擬戦後。ハンガーにて。  恭介がハンガーの整備台にAAを収める。  被弾した右腕はペイント弾の赤い塗料がついている。ただし、あくまで被弾判定によってシステムロックがかかっただけなので、実際の損害はない。  車の整備用リフトのような、ポールから棒状の足場が横に伸びたリフトが首の高さで止まる。  AAの頭部がせり上がり、足場に立った作業員がコクピットに座っている恭介のベルトを解く。 「ありがとう」 「いえ。さすがですね、龍見二尉」  恭介がコクピットから降りてヘルメット脱ぐ。  AAのコクピットは機体の首の付け根にある密閉型。万が一被弾により頭部のメインカメラを破壊された場合は、首元の覗窓を開いて有視界戦闘も行うことができる仕様となっている。  足場の一つがエレベーターのように下りる。下りたところには、僚機に搭乗していたパイロット、千石二尉と、桃井二尉がヘルメットを提げて待っている  千石のヘルメットの形状が恭介のものとは少し違う。千石のヘルメットはカメラの映像を視覚に投影するモデル。  AAの視覚インターフェイスは、ディスプレイを肉眼で見るタイプと、ヘルメットのシステムで視覚に直接映像を投影するタイプに分かれている。  後者は映像化にわずかにラグがあることと、視覚に直接投影することに違和感を感じる者もおり、どちらを使うかはパイロットの裁量に任されている。 「すまなかった」 「いや、いいってことさ」 「一杯奢るぜ」 「ああ、ありがたいな」 そんな感じで軽口をたたいているところで。 「龍見二尉!」  風鞍結三尉が歩いてくる。パイロットスーツ姿ではなく、モスグリーンの陸自の平服をきている。襟には、AAのパイロットである徽章が輝いている。  肩くらいまである黒髪をゆるいポニーテールにしている。おとなしめの顔立ち。姿勢が良い歩き方。  お嬢様っぽい上品な雰囲気だけど、目の光は強い。  近づいてくる結にやれやれ、という感じでいやそうな表情を浮かべる恭介。 「真剣に取り組んでください、龍見二尉。貴方なら圧勝もできるはずです」  結がAAの方を指さす。  ペイント弾が右肩を汚していて、整備員がそれを落としている。ペイントの塗料は剥離剤を使えば綺麗に落ちてあとは残らない。
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