其の三 返却

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「そうっすね。みんなは部活がんばってますね。てか、学校のこと詳し過ぎじゃないですか!?」 「ろくろっ首ですが、少女漫画を読んでるんで、人間の世界のことはたいてい知ってますよ!」 彼女は自慢気に答えた。 「少女漫画読んでるんすか!…あの、どんな作品を?」 「…読み終わって捨てられてるのを拾って読んでます。恥ずかしいですよね!あ、マーガリン、とか読んでますよ。」 「恥ずかしくなんかないですよ。姿が見えないのを活かさないと。」 彼女は意外そうな顔をした。 「…あの、学生さんは、私たち妖のことを、迷惑だと思ってないんですか?昨日だって、脅かしたのに。」 「思ってないっすよ。全然。確かに昨日はほんっとに怖ったです。でも、今は理由もわかったので、オッケーです!」 なぜか彼女は安堵の表情をしている。 「…私、みんな妖を疎ましく思ってるんだろうなと思ってました。でも学生さんは、姿が見えないのを活かせとまで…。ちょっと嬉しいです。」 よくわからないが、嬉しいのなら悪い気はしない。 「ろくろっ首さんが気にすることないですよ。あ、それよりマーガリン読んでるんですよね?」 「え?…はい。」 少しためらいはあるが、話してみる。 「…実は俺、マーガリン読んでます。母の影響で。」 「えっ!そうなんですか!同じですね!何のお話読んでますか?」 「えっと、全部読みますけど、特に好きなのは『あなたに伝われ』っすかね!」 男が少女漫画を読んでいるなんて引かれてしまうと思ったが、意外にも受け入れてくれた。 「あな伝!私も1番好きです!マーガリンのお話は全部好きなんですけど、やっぱり嵐早くんと泥沼さんの距離感が、たまりません!」 彼女は目を輝かせながら話している。浩志のあな伝のお気に入りポイントと、共通点は多かった。まさかろくろっ首と共通の趣味があるとは、考えもしなかった。ましてや誰にも言えなかっただけに、かなり嬉しい。 「私も女子高生になりたいなぁ…。」 「あの、女性に対してすごい失礼なんですけど…おいくつですか?」 恐る恐る聞いてみたが、彼女は気にしていないようだ。 「15です。だから女子高生が輝いて見えます!…あ、学生さんは?」 「俺は16です。近いっすね!」 「ほんとですね!…なら、こんなかしこまらなくてもよかったな。もっと気楽に話しましょ!」
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