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浩志はこのまま敬語を使うか悩んだが、ろくろっ首の言葉に甘えて、タメ口を使う。
「そ、そうだね。あ、名前聞いてもいい?」
ちょっとナンパっぽいかな、と思ったが、やましい気持ちはないのでいいだろう。
「あ、お六です。以後お見知り置きを~」
「お六さん、か。…じゃあ、ろくちゃん、って呼んでもいい?」
浩志は友達を作るのはあまり得意ではないが、名前を覚えやすくする目的もあり、最初は友人のことを〇〇ちゃんと呼ぶことにしている。
「ろくちゃん…」
お六は少し俯いた。
(あ、嫌だったかな…)
「いいですね!すごくいいです!私あだ名とか初めてで、なんか感動してます!」
嫌ではなかったようなので、ほっとした。むしろこちらが引くほど喜んでくれた。
「あ、学生さんのお名前は?」
「俺は峰 浩志。」
「浩志さん…じゃあ、浩志くん、でどうですか?」
まさか下の名前で呼ばれるとは思っていなかった。久しく女子に名前で呼ばれてないので、免疫がない。でも最高だ。
「いいよ!よろしく、ろくちゃん!」
「浩志くん、…よろしくね!」
なんだか面と向かってよろしくというのは、照れる。浩志はふと、空が暗くなっていたのに気づいた。少し肌寒くもなっている。そろそろ帰らないと、お六が風邪をひいてしまっては大変だ。浩志は綾可視鏡をお六に返す。
「じゃあ、そろそろ帰るわ。綾可視鏡、ありがとね。」
「え、なんで綾可視鏡の名前を?」
「昨日たまたま俺を助けてくれた人が、先祖にこれを作ってた人がいてね。それでこれを見て、俺に教えてくれたんだ。」
「へぇ~、私たちのことを知ってる人、意外にいるんですね!」
「そう。だから、ろくちゃんも自信持って。」
「…はい。あ、でもこれを持ってないと、浩志くん私のこと見えないや。」
「そっか。でも、大事なものなんでしょ?俺が持ってる訳にはいかないなぁ。」
「うーん。あ、でも、声は聞こえるらしいので…また呼んでもいい、かな?」
「…もちろん!俺はいつもこの道通るから、暇なときにでも声かけて!あな伝の話しよう!」
「…はい!きっとですよ!」
「おう!じゃあ、またな!」
「気をつけてくださいね!」
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