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1章
「慎之介殿、いつまで眠っているのです。とっくに日は昇っておりますよ!」
姉の声はいつも甲高くて、頭にガンガン響いてくる。
やれやれ、今日は休みなのだ。別に朝起きずとも良いだろう。どうせ独りなのだから、朝寝を貪ったところで誰に迷惑をかけるわけでもない。それに、今朝はやたらと布団が心地よくてたまらないのだ。この柔らかくて暖かい感触、抱き心地は久しく忘れていたものだ。これは何だったか……ええっと……
「休みの日にこそ、規則正しく過ごさねばならぬと、いつも申して……」
姉の近づいてくるのが、布団の中に潜っていても分かる。女性らしい軽やかな足音、障子の開く音、そして布団を引き剥がす激しい布擦れの音……
「きゃあっ!」
「……姉上?」
予期せぬ悲鳴に驚き、慎之介は訝し気に身を起こした。姉は嫁いだ身でありながら、毎朝27にもなる弟の蒲団を引き剥がしに来るような世話好きの、気の強い女性なのだ。そうやすやすと悲鳴など上げるわけがない。
しかしその原因にはすぐに気づいた。なんと、慎之介が抱きしめて眠っていたのは、髪を振り乱した、一糸纏わぬ若い娘だったのだ。
「おわっ?!」
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