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2章
その後、飯を食べてからふうの家を探しに出かけたのだが、それがまた大層難儀なことで出発までに思いの外時間がかかってしまい、二人が家を出た時にはもう日が傾き始めていた。
歩き始めてからも、ふうは恐ろしく手がかかった。
足が痛い、4つ足で歩きたい、と散々に駄々をこね、持て余した慎之介は松幡橋を渡ったところで、一服することにした。家を出て僅か4町(約400m)ほどで休憩とは、情けない話だが仕方が無い。八丁堀の割堀を望む茶店の長床几へ、並んで腰を下ろす。
「この辺りだと、まだ匂いはしないか」
念のために聞いてみたが、やはりふうは首を横に振った。そりゃそうか。新場橋はまだ少し先だ。
「でも、いい匂いが……」
「それは団子を炙っている匂いだ」
苦笑しているうちに、甘辛いみたらし団子が載っている皿が運ばれてきた。正直、慎之介はこれまであまり好きではなかったが、佳代の好物で仏壇によく供えているから、このところ食べ慣れてきた。
「熱っ!」
勢いよくかぶりついたふうが、すぐさま吐き出した。
「そりゃ熱いだろう。よく冷まして、少しずつ……あぁ、分かった。ちょっと待っておれ」
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