エピローグ

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「それさ、実は念話用魔具なんだ」 「え、そうなの?」 ようやく離れた距離に安堵しながら、少し長めのネックレスをまじまじと見つめる。 「高価なものじゃないから、ノイズは多いかもしれないけど…60分くらいは使えるらしい」 60分かぁ…多いのか少ないのか。 「週1回2~3分でいいから、連絡くれるか?」 そう言ってミカサ君が胸元から全く同じネックレスを取り出した。 ペ・ア! ペアのアクセサリーだなんて上級者すぎて、もうね、脳みそが沸騰してる。 私の無敵の銀色の魔眼が、ミカサ君に向かって【うずまき君】を放ちそうな勢いだよ!! 「これ、冒険者がいつでも家族に無事を知らせられるように開発されたんだって」 あぁ、なるほど。 家族の安否確認用なのかぁ。 受けた依頼によっては、長期間帰れなかったりするらしいもんね。 現実に引き戻された私の思考が、一気に冷静になる。 「言ってる意味、分かってる?」 ミカサ君が私の顔を覗き込んでくる。 緑色の前髪がサラリと流れ、陽の光を受けてキラキラ輝いている。 くぅ〜〜!髪の一本一本までイケメンだなぁ。 「もちろん。週一回…日曜の夜とか決めておいた方がいいのかな?ちゃんと無事を知らせるから安心してね」 ここまで私を心配してくれるなんて、ミカサ君って本当に優しい。 誰にでも優しいのが残念だけど、でも、やっぱり優しいのは嬉しい。 「あー……おぅ……日曜の夜……了解……」 何故か遠い目をしたミカサ君が、薄っすらと笑った。 日曜の夜じゃ迷惑だったのかな。 「クルミは、教育を隅々まで行き渡らせるための活動をするんだろう?」 いきなり話題が変わったな。 真面目モードのミカサ君に安堵しつつ、報告会で伝え切れなかったことを話し始める。 「うん。小さな村にも漏れなく教育が行き届くよう、通信教育システムを構築しようと思ってるの。 ルドラを見つけるには科学技術の発展が必要だって話だったけど…ほら、今の技術者って、どうしても魔法頼みのところがあるじゃない」 この話題なら、ミカサ君相手でも緊張せず淀みなく喋れる。 「だからね、変に魔法慣れしていない人のほうが開発に向いてるんじゃないかなって思ってて」 うんうん、とミカサ君が真面目な顔で聞いてくれている。 「そういう、新たな技術をフラットな視点で向上させてくれる天才は、既存概念に基づいた教育を受けている都市部より、壁の外の村の方が多いんじゃないかって思うの。だから、一刻も早く教育を行き渡らせて、新たな天才を発掘したいんだ。 あとはね、冒険者になるにも魔法理解が必要じゃない。だけど、字を読むことすら怪しいレベルの村人から冒険者になるってすごく大変なことみたいで、言語や基本的な教養だけでも子供のうちに受けておいたら、どんな道に進むにしても大人になって役立つと思うんだよね。それからね……」 そこからしばらく、活動の理由と目的を延々と喋り続けた。 これ、喋り出すと長くなっちゃうんだよねー。
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