第3章 正しい情報のある場所。

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「え……でも、それって、思想教育ってやつなんじゃ……」 思想教育は、国際法で禁止されている。 それを、国の認可を得ているはずの教育機関が行っているってこと? 「思想教育が禁止されているのは、危険思想を持たせないためだ。昔、ノーサールで危険思想に走った若者たちがテロ活動を行って多くの被害者が出たことがあるらしい。それを教訓に、危険思想を持たせないための緩やかな洗脳教育が取り入れられるようになった。 もちろん誰も、自分が洗脳されているなんて思っていないだろうがね。」 「でも、お父さんもおじ様も、洗脳教育が行われているって知っているってことだよね?」 私の言葉に、おじ様が頷いた。 「宗教活動と洗脳教育は、紙一重だからね。 クミール家を神格化して尊ばせる事で、ある程度国民をコントロールする事が出来てしまう。 だから、クミール家の人間はその力を正しく扱うために、舞だけでなく洗脳というものについても学ぶんだ。 その過程で、国家レベルで行われている思想教育についても学んでいるんだよ。」 その言葉に、マキがショックを受けている。 「宮廷舞踏団は…洗脳集団ってことなの…?」 いやいや。 それはぶっ飛びすぎ。 「まさか。 我々は太陽神に舞を奉納するのが勤めだ。 そして、人々に太陽神の癒しの力を分け与えるという役割を仰せつかっている。 我々が何かメッセージを民衆に伝える事はないのだから、洗脳にはなり得ないよ。 でも…もしも舞と癒しの力を使って民衆を誘導しようと思えば、出来てしまうだけの影響力は持っている。 だから、そうしないために、きちんと学ぶんだ。」
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