第3章 正しい情報のある場所。

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宮廷舞踏団の長い歴史の中では、もしかしたらそういう不穏な動きをする者もいたのかもしれない。あるいは、宮廷舞踏団のカリスマ性を利用して、人々を動かそうとするもっと偉い人とか。 そういった人々に利用されないためにも、自らが自分たちの与える影響を正しく理解することは、すごく大事なことなのだと思う。 「思想教育を知らないうちに施されていることと、家庭訪問の話がどう繋がるの?」 姉の言葉に、家庭訪問の話だったことを思い出した。 宮廷舞踏団で働く姉にとって、思想教育や洗脳と言った話はお馴染みのものなのかもしれない。 冷静に話を軌道修正してくれて助かった。 「それは・・・どうして人間が今も壁の中にいるのかという話に繋がるんだけどね。」 父が神妙な面持ちで姉の問いに答える。 長めの前髪が眼鏡にかかるのが通常モードの父は、昔からその表情の変化を読みにくい。 淡々とした口調で表情を変えずに突然重大発表をしたりするから、受け手は心の準備をする暇がないのだ。 だから今も、どこまで想定外の話をされるのか図りきれず、必要以上に緊張してしまう。 地味な父は、その髪がこの世界で極端に少ない黒髪でなかったら、すぐにその印象を消してしまうだろう。 どこにいても目立つマキの父親とは対照的だ。 「壁や囲いの中に人々を縛り付けておけば、全ては無理でも大まかに人間を監視できる。 しかし、自由に暮らすようになれば、国が把握しきれない人々が生まれてしまう。 その中に不穏な考えを持つものがいたら・・・目の行き届かないところに他の人間まで引き込まれかねない。だから、王や魔人たちは、人間を囲おうとするんだ。」 「でも、それって・・・良いこととは思えないんだけど。」 私の言葉にウンウンとマキが頷く。
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