第3章 正しい情報のある場所。

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ご先祖様が本当に勇者なのか。 勇者だったとして、アイリーン=ソルトではない可能性の方が高い。 それでもこの人に惹かれるのは、私の良すぎる「勘」の力によるものだろうか。 幼い頃から何度も何度も読んだ本を、もう一度読み返した。 いや、一度と言わず、時間の許す限り何度も。 そのまま夕飯の時間になり、お散歩デート帰りのマキに図書室に入り浸っていた話をすると、だいぶ憐れんだ目を向けられた。 ついでに、吹奏楽部の練習帰りのエーデルトリオにも。 部活や恋愛だけがリア充の全てじゃないんだぞ! という事を、声を大にして言いたい。 そんな穏やか?な夕食の翌日。 センセーショナルな世界放送が流れた。 世界放送とは、世界的有事の際に使用される特別回線で、全世界同時に空中映像と音声が流れるシステムだ。 何がセンセーショナルって。 映像の人が名乗った名前と風貌だ。 「私の名は、カイ=ミライ。 皆さんご存知の最後の勇者、アイリーン=ソルトの末裔です。 私は彼女の意思を継ぎ、500年ぶりに世界の主導を人間の手に戻すべく立ち上がる事をここに宣言します。 この回線は、ウェスロからのものです。 ウェスロ国王は我々に賛同し、五大国同盟を脱退することを決意され、人間ではなく魔人と成り果てた己への懲罰として自害されました。 我々はウェスロ国王の遺志を尊重し、ここに五大国からの離脱と国際魔人連盟の干渉からの脱却を宣言致します。」 私と同じ姓を持つその少年は、世界放送で堂々とそう言ってのけた。 その髪色と瞳は美しく煌めく銀色。 勇者と同じ銀色を持つ少年は、私によく似た顔で微笑んだ。 「異論反論は受け付けます。 ウェスロは五大国同盟から離脱しますが、鎖国は致しません。それが正当性のある申し出ならば、いつでも対話の用意がありますよ。」
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