第1章 主役じゃない日々の始まり。

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第1章 主役じゃない日々の始まり。

目覚ましの鳴る音より早く目が覚めた。 こんな事は、記憶にある限り初めての事だ。 今日から、新しい一年が始まる。 校舎が変わって、制服が変わって、クラスメイトが変わって。 いつもなら、ワクワクして嬉しい日なのに。 今年は憂鬱。 憂鬱すぎて、沈鬱。 今日から私は、人生初の負け組として生きていかなければならない。 経験がないだけに不安だ。 4月はまだ少し肌寒い。 ベッドを出る気になれなくて、もぞもぞと横を向く。 部屋の隅に置かれたダンボールの箱。 あれも早く荷解きしなくちゃ。 この部屋を出る気満々で荷造りしていた自分を思い出すと、恥ずかしくてこのままベッドに沈んでしまいたい。 ぎゅっと目を瞑ると、廊下から微かな物音が聞こえる。 新学期初日だから、いつもよりみんな早起きなのだろう。 起きよう。 負け組の中の一番になれば良いではないか。 私が優秀であるという事に、変わりはないのだから。
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