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ギギッと軋む音をさせながら扉がゆっくりと開き、マキも私も思わず息を飲む。
「あはは。魔法ってもしかして、初めて見た?」
初めて見た。
あんな重そうな扉も、魔法の力で動かせるんだ。
「魔法使いになったら、その先の人生は全部自動ドアですね。」
「まぁ、普通のドアでそんな無駄な労力は使わないけどね。」
「自力で開け閉めするのと、手で開け閉めするのって、どっちが大変なんですか?」
「うーん…状況にもよるけど、私の場合は魔法使う方が楽かなぁ。でも、手が届くなら、自分で開け閉めする方が好き。」
「好き…ですか。」
扉の開け閉めに好きとか嫌いとか、考えた事がなさすぎてよく分からないコメントだ。
王家の紋章について聞きたかったのに、先生とマキのやり取りを聞いているうちに、なんだかタイミングを失ってしまった。
「じゃ、これよろしくね。」
手渡されたのは、クラス全員分の冊子。
表紙は真っ黒でタイトルの記載もない。
3センチほどの厚みがある。
「参考書か何かですか?」
教科書はすでに受け取っているため、追加の教材かと思って聞いてみたんだけど。
「あー、それは魔組で使ってるのと同じ教科書。
学園側にバレたら煩そうだから、表紙は加工したけどね。」
えっ。
えっ。
えっ??
「ま…魔組の教科書って…それ、良いんですか!?」
「作者本人が誰に配ろうが、こっちの自由だと思わない?」
にっこり笑うスズキ先生に、マキと2人ぽかーんと顔を見合わせる。
魔組の教科書を書いた人?
それって……
「本当は何者なんですか?」
王属魔法師の中でもかなり地位のある人なんじゃなかろうか。
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