第1章 主役じゃない日々の始まり。

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ギギッと軋む音をさせながら扉がゆっくりと開き、マキも私も思わず息を飲む。 「あはは。魔法ってもしかして、初めて見た?」 初めて見た。 あんな重そうな扉も、魔法の力で動かせるんだ。 「魔法使いになったら、その先の人生は全部自動ドアですね。」 「まぁ、普通のドアでそんな無駄な労力は使わないけどね。」 「自力で開け閉めするのと、手で開け閉めするのって、どっちが大変なんですか?」 「うーん…状況にもよるけど、私の場合は魔法使う方が楽かなぁ。でも、手が届くなら、自分で開け閉めする方が好き。」 「好き…ですか。」 扉の開け閉めに好きとか嫌いとか、考えた事がなさすぎてよく分からないコメントだ。 王家の紋章について聞きたかったのに、先生とマキのやり取りを聞いているうちに、なんだかタイミングを失ってしまった。 「じゃ、これよろしくね。」 手渡されたのは、クラス全員分の冊子。 表紙は真っ黒でタイトルの記載もない。 3センチほどの厚みがある。 「参考書か何かですか?」 教科書はすでに受け取っているため、追加の教材かと思って聞いてみたんだけど。 「あー、それは魔組で使ってるのと同じ教科書。 学園側にバレたら煩そうだから、表紙は加工したけどね。」 えっ。 えっ。 えっ?? 「ま…魔組の教科書って…それ、良いんですか!?」 「作者本人が誰に配ろうが、こっちの自由だと思わない?」 にっこり笑うスズキ先生に、マキと2人ぽかーんと顔を見合わせる。 魔組の教科書を書いた人? それって…… 「本当は何者なんですか?」 王属魔法師の中でもかなり地位のある人なんじゃなかろうか。
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