第1章 主役じゃない日々の始まり。

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「いやー、本を自分で書いて教材にするって、よくある話なんだよ? 他人の書いたものより、自分で書いた本の方がより深く理解して教えやすいでしょう?それに、毎年必ず生徒が買ってくれるわけで、そしたら印税も少なからず入るじゃない。」 そうなの? 魔組という特殊過ぎるカリキュラムで使用される本を書くって、相当な実力者じゃないと無理なんじゃないの?? 「そもそも、主要5科目で全て魔組に勝つって言ったのは、ミライさんでしょ? 基礎魔法学だけは教科書が違うから、同じテストを受けるとなると魔組以外は不利なんだよね。 だからこうして、魔組に勝つ可能性を高めるために同じ教科書で学んでいこうかと。」 「教科書が違うのに同じテストって所がそもそも問題ですよねぇ…」 マキの小さな呟きに頷く。 知らなかった。 基礎魔法学だけは同じ教科書なんだと思っていた。 「一組なら魔組の教科書でもついてこれるだろうし、やってみても良いかなって思ってさ。 でもこれ、寄宿舎に持ち帰らせるわけにはいかなくて。今配ってある教科書に補足として書き込んで、自分なりの教科書を作ってもらわなくちゃなんだけどね。」 持ち帰れない…さすがに、それはそうか。 万が一複製されて流出でもしたら、色々と大変そうだ。 でも、教科書を持ち帰って自宅学習が出来ないのは痛い。 「同じテストを受けられる程度には、普通科用の教科書も内容はきちんとしているから、心配しなくて大丈夫。 さっきミライさんが言ってたように、参考書だと思ってもらえれば。 必要だと思うことは、授業中に全て自分の教科書に書き写してね。」 「はい。みんなにも伝えます。」 「よろしく、委員長!」 マキと半分ずつ冊子を持って、魔法学科室を出た。 手にしているのが魔組と同じ教科書だと思うと、なんだか緊張する。 …それは、私だけのようだけど。 隣でふんふん鼻歌を歌うマキは多分、今日も己の趣味とスズキ先生を重ね合わせて満足しているのだろう。 これから毎日、眼福フィーバーだ!と歓喜しているマキだからね。 ちょっと正直、意味が分からない。
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