第1章 主役じゃない日々の始まり。

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教室に戻ると、始業まであと3分しかなく、ほとんどの生徒が自席で基礎魔法学の教科書をペラペラめくりながら、近くの生徒と談笑していた。 お前ら、真面目かよ。 「基礎魔法学で使う参考書を配ります。 持ち帰り厳禁のため授業後に集めますので、取り扱いに注意して下さい。」 一声かけて皆に配る。 「なに、これ。」 「表紙やばくね?」 「えー?真っ黒ってむしろ新鮮でカッコいいかも。」 「それ、本気で言ってんの?」 口々に色んなことを話している皆に、付け加える。 「これは、私たちが主要5科目で魔組に勝利するためにスズキ先生が特別に用意して下さった、魔組と同じ基礎魔法学の教科書だそうです。」 私の言葉に全員が息を呑み、教室が静まり返る。 「持ち帰り厳禁というのは、そういうわけです。 教科書が違うのに同じテストを受けるのは、魔組に勝負を挑む一組にとって不利になるだろうという、スズキ先生のご配慮です。 授業内で、必要と思われる内容を自分の教科書に全て書き込むなどして、自分なりの教科書を作り上げて欲しいとの事でした。 一学期考査まであと3ヶ月ありますから、この参考書の内容をなるべく多く吸収して下さい。」 クラスが静まり返る中、ぺこりと頭を下げて自席に着いた。 ちょうどそのタイミングで始業の鐘が鳴り、スズキ先生が教室の扉を開ける。 先ほどまでとは打って変わった緊張感漂う雰囲気で、初めての授業が始まった。
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