第1章 主役じゃない日々の始まり。

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基礎魔法学とは、魔法の発生する仕組みを学ぶものである。 一般には公開されていない魔法の仕組みを、この学園では必須科目として学べるのである。 脳のどの部分を活性化させて魔力を生み出すか。 活性化した魔力をどう錬成して魔法に変換するか。 そういった、魔法を発動させるための基礎を学べる。 もちろん、私たちは魔力を持たないので、学んだところで扱えはしないのだけれど。 「多分、優秀な一組の皆さんの事だから、しっかり予習してきてると思うので。」 クラスを見渡しながらスズキ先生が張りのある声を出す。 いつもと違う、授業用の顔と声だ。 魔法使いとしての威厳漂う、風格。 「私からは補足を中心とした授業を行っていきます。 つまり、魔組と全く同じ教え方です。 一学期考査ではほとんど差はつかないでしょう。 問題は、二学期から。 魔組の生徒は、一時的に魔脳部を活性化させる薬を投与され、魔人化するまでは人間として魔法を扱うようになります。」 ざわり…と、静かなはずなのに教室の空気が動いたような気がした。 「魔法を実際に扱いながら学ぶのと、魔法を放つ事なく座学で理解するのとでは、その習得にかなりの差が出てしまうでしょう。」 静まり返る教室の空気で、耳鳴りがしそうだ。 昨夜の食堂での、トラン先輩の言葉が耳の奥で蘇る。 『魔組に勝とうとか、魔組の俺からしたらあまりにも無謀な発言に思えるけど。』 魔組の授業に関する情報は、外にはほとんど漏れてこない。だから、魔人化しないままで実際に魔法を扱っているなんて、知らなかった。 魔組であるトラン先輩は、このことを知っていたから、無謀だと言ったのだ。 学年一位で負け知らずの私は、どんな事も努力だけで何とでもなると思っている。 でも、努力だけでは追いつかない事もあるのを、学んだばかりなのに…また努力に縋ろうとしていたのだ。 己を過信しすぎるのは、私の悪い癖だな…。
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