第1章 主役じゃない日々の始まり。

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「魔法使いを万能だと思いすぎる事は間違いであると、皆さんには知っておいてもらった方が良いと思うので、こういった授業スタイルを実験的に取ることにしました。 皆さんがモデルケースとなります。 皆さん次第で、魔法の在り方の未来が変わるかもしれません。 ……心して、学んで下さい。」 ピンと張り詰めた空気が教室を包む。 そこには、先ほどまであった緊張感や興奮はなく、驚くほど全員がスズキ先生の言葉に集中していた。 やる気にさせるの、うまいなぁ。 魔組には、どんな風な声かけをして、士気を高めるのかな。 「さ、では、黒本の最初からいきましょう。」 スズキ先生の声を合図に全員が一斉に真っ黒な本を開く。 ここに、私たちがあと一歩で逃した魔法に関する事が書かれているのだ。 全員が真剣に、初めての基礎魔法学に取り組んだ。 思念を実体化する役割を果たす脳の一部…魔脳がどこにあるのか。 魔力とは何なのか。 魔力を練るというのは、具体的にどう行うのか。 魔法を発動させるためのプロセス。 何となくぼんやりと書かれている普通科の教科書とは全然違う、臨場感のある解説がそこにあった。 これさえ読めば、魔法使いでなくとも、魔法を操れるような気がしてしまうほどに。 戦いの火蓋は切って落とされた。 まだその戦いは、こちらからの一方的なものであるけれど。 魔組にとって一組が脅威となれるように。 勝負は、ここからだ。
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