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「クルミーっ!」
「マキ!おめでとうっ!!」
やっとマキと喋れた。
いろんな人に取り囲まれていてなかなか近づけなかったけど、ようやくだ。
庭の一角にある真っ白なベンチに腰掛ける。
昔よく木登りしたトネリコの木が、程よい木陰を作っている。
あの頃は2人揃えば遊ぶことに夢中で、こんな風にマキの結婚祝いをこの木の下でする日がくるなんて思いもしなかった。
ずっとずっと子供のままで、いつまでも木登りをしながら遊び続けるんだと思っていた。
だけど――確実に、月日は流れるんだな。
私たちは多分もう二度と、木登りをしない。
「さっき、先輩たちに聞いたんだけどね…フランデル先輩、ウェスロ大学のサッカー部で大活躍らしく、プロのスカウトにも注目されてるんだって!」
「え、すごっ!」
ウェスロ訛りのフランデル先輩…懐かしいな。
結局おかっぱ先輩とはどうにもならず、国に帰ってしまった。
恋を実らせるって、なかなか難しい。
「それから、サリーナ先輩とアオイ先輩はついに漫画家デビューが決まったらしい。入稿が近いから今日は来れなかったけど、よろしく伝えてって言ってくれてたみたいだよ」
「絶対、その本買う!」
文芸部の先輩のうち、今日はおかっぱ先輩とめがね先輩だけが来てくれている。2人とも国内の有名私立大学に進学していて、マキのお祝いに来てくれた。ただ来るだけじゃなくて、他の先輩方の情報もしっかり持ってきてくれるところがさすがだ。
ウェスロに帰国して進学したフランデル先輩や、エクアトの美術大学に進学したサリーナ先輩とそれを追いかけたアオイ先輩は遠いので不参加。
でも、これから私もマキも世界中を巡るので。
近くに行った時には絶対に会いに行こうと思っている。
「早く、舞台に立つマキを見たいなぁ」
「私も、早く舞台に立ちたい」
マキが本当に本当に嬉しそうに笑った。
いつも綺麗なマキだけど、今日は普段しない化粧とドレスに彩られ、舞の装束を身につけたときとはまた違う美しさがある。
見た目だけじゃなくて、マキの喜びと幸せが溢れんばかりに感じられて。
この姿を見ただけで幸せになれると言っていた会長の気持ちは、実は私もすごくよく分かる。
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