エピローグ

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「でもさ…今さらだけど、よく宮廷舞踏団を去る決心したね」 気になっていたけど、聞きそびれていたこと。 あれほど宮廷舞踏団を愛していたマキが、舞えなくてもそこに携わりたいと言っていたマキが、どうしてそこから去る決意をしたのか。 「始まりの戦いでノーサールの首都に行ったときにね」 ――始まりの戦い―― 私たちが召喚師として参加したあの戦いは今、そう呼ばれている。 「周辺の村から非難してきた人が、広場に集められていて。みんな疲れきって、何かを諦めたような顔をしていて」 当時の気持ちが蘇ったのか、マキの表情が曇った。 「その時に、宮廷舞踏団を見たことがないっていう村の子供達に会ったの。 みんなが少しでも元気になれたら…癒しの力は持っていないけど、せめて気晴らし程度にでもなればって気持ちだけで、その場で舞ってみせたんだ」 その光景を想像するだけで、マキの優美な舞に目を奪われる観衆の喜びが目に浮かぶ。 きっと皆、すごくすごく感動したことだろう。 だって、マキの舞は魔法とか関係なく――特別だから。 「癒しの力なんて持っていなくても、真心を込めて舞えば、人を癒し元気付けることができるんだって。いつもクルミはそう言ってくれてたけど、あの時初めてそのことを理解したの」 そう言って微笑むマキは、本当に嬉しそうで幸せそうで。 見ているこちらまで自然と笑顔がこぼれてしまう。 「宮廷舞踏団は、その性質上きちんとした舞台装置がある場所にしか行けない。だから私は、宮廷舞踏団が行けないような場所にこそ癒しを届けたいの。今回所属するのは大きな団体だから、小規模集落を回るなんてことは無理だけど…でも、いつか自分の団体を立ち上げたら、小さな村にも私の舞いを届けたいなって思うんだ」 「マキの舞に触れたら、みんな元気になっちゃうよ!」 「クルミはいつも私を過大評価するなぁ」 「過大じゃないって!」 それぞれ違う目的ではあるけれど、互いに自分の目で世界を見て、世界に必要なものを届けようという根幹は同じで。 大好きな親友と同じ気持ちで旅立てることが心強く、嬉しい。
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