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「近くで興行してる時は、絶対見に行くからね」
「いいポジションで踊るところを見てもらえるように、しっかり稽古するね」
いや、マキなら入団直後からセンターポジションで主役になってそうな気もするけどね。
それからしばらく、セキ兄ちゃんとアイラお姉ちゃんのところに生まれたばかりの甥っ子の話や、最近団内に彼女ができたらしいナキ兄ちゃんの話で盛り上がった。
「あ」
何かに気付いたマキが、ベンチから立ち上がる。
「出発する前に、もう一度声掛けてね」
そう言って、後から来た人にその場所を譲る。
隣を見るのがなんとなく怖くて、軽やかに去って行くマキの背中を目で追い続けた。
「俺、何にも聞いてなかったんだけど」
ごめん、言いづらくて。
「学部は違えど、一緒にトウ大学に通うものだと思ってたよ」
ぎりぎりまで、迷ってはいたんだけどね。
「クルミ、こっち向けよ」
「…コンニチワ」
卒業式以来で顔を合わせたミカサ君が、ふて腐れたような表情を浮かべて座っていた。
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