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しばらく、気まずい沈黙が続く。
どうしよう。
ミカサ君がそんなにショックを受けてくれるとは思わなかった。
あの時。
卒業式後の報告会で、旅人になるという素っ頓狂な進路を発表した時。
ミカサ君は能面みたいな顔をしていた。
私の未来なんて興味なかったのかなって、少し淋しかったんだけど。
ところがどうやら、ミカサ君はだいぶ怒っていたようで。
その後も一度も話すことなく、目も合わさず、学園を後にしてしまっていた。
ここで会えるって分かってたから、私も無理に声は掛けなかったんだけど。
でもいざ向き合うと、怖い。
緊張する。
だけど…これが本当に、旅立ち前の最後のチャンスだ。
何から喋るべきか、どう言ったら伝わるか、必死で考えを巡らせる。
半ばパニック状態で頭をぐるぐるさせていると突然、隣から大きなため息が聞こえた。
色んな感情を全部吐き出したみたいな、大きくて長いため息。
「ごめん、俺かっこ悪いな。こんな時まで拗ねるとか…相変わらずダサいよな」
「いや、そんなことは…」
突然謝られて、更に焦る。
始まりの戦いの後、ミカサ君は私に謝ってくれた。
安易な気持ちでクローン研究を手伝った自分をものすごく責めていたし、恥じてもいた。
知らなかったことだし、ミカサ君は自分の正義に則って行っていたことだし、そこまで気にしなくても…と慰めたのは、もう2年半も前のことだ。
少しずつ自信を取り戻したミカサ君が、ようやく昔みたいに屈託なくイケメンを振りまけるようになったというのに。
今のミカサ君は、あの頃に戻ったかのような項垂れっぷりだ。
「まさかこんな風にクルミと離れ離れになるなんて、思わなかったんだ」
そんな特別感アリな感じで言われると、めっちゃドキドキするんですけど。
でもまぁ、片想い歴もだいぶ長いんで、分かってますけどね。
期待しちゃだめだってちゃんと弁えてはいますけどね。
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