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どこで覚えて来たのか、味噌は火を止めてから入れろ、赤味噌は風味が、白味噌は栄養が飛んでしまう。と、夫が毎回口を酸っぱくして言い続けていたお陰か、本当に些細で大した事では無いが、未だにこの癖は抜けない。
少し味見し、お椀によそうとまずは戸棚の上の夫の前に置く。
そして忘れてはいけない、夫の目の前でスダチをきゅっと一絞り。
ゴマや木の芽など、本当に色々試したが夫はこう食べるのが一等好きだった。
一仕事終え、腰に手を当て満足げに息を吐いてからはっと気付く。
御飯も炊かずおかずも作らず、しかもお茶も出さずにおみおつけだけのお供えとは、流石に呆れたと、動かないはずの写真も笑っている様に思える。
ちゃんと今でも貴方の好みを覚えて作ってるんだからと、心の中で少しだけ言い訳をし、自分の分をよそいに台所へ戻る。
そこで味噌の匂いを嗅ぎ思い出す。
そう言えばさっき味噌がもう心許ない量になっていたなと、再び味噌樽の蓋を開け中身と睨めっこをする。
一人では使う量も限られる。
今からもう一樽買い足しても、最悪の場合今生では使い切れないかも知れない。
味噌を買う店は、もう何十年と通う馴染みのお店だ。
我が儘を言えば、歯の抜けた口をかっと開け笑い「しょうがねぇな」と憎まれ口を叩きつつも量り売りをしてくれるかも知れない。
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