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「んじゃ、私こっちだから!」
思っていたより近くから聞こえたその声に気がついたときには遅く、私は快活そうなその女性と軽くぶつかっていた。
「あっ、すみません」
倒れそうになる女性の腕を思わずつかむ。彼女は驚いたような顔をしつつも、笑ってくれた。
「いえ、こちらこそ」
彼女は体勢をたてなおして、スーツを整える。少し先で、マスク姿のポンさんがこちらを見ていた。私と目があうと、サッと横に目をそらし、ぎこちなく回れ右をして駅へと向かってしまった。
「……あの」
「あ、はい」
その背中を見ていると、女性が声をかけてきた。不思議そうな顔をしている。
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