マスクを脱がない女

5. 帰り道で

　帰宅すると、ポストをあけ郵便物を取り出す。ポストを閉めると、アパートの階段を登り鍵をあけ部屋に入った。街の中心からやや東に外れた場所にある、築30年の古すぎず特別新しいというわけでもないアパートが、私の家。

「ただいま」

一言いって、電気をつける。内鍵をしめて靴を脱ぐと、そのまま居間へと足をすすめる。

一人暮らしだから何かを言ったところで返事をしてくれる存在などありはしないのだが、つい癖なのだ。