8. いやな提案だとしても

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「ねえ、明日もさここでごはん食べていい?」 「え?」 「コンビニで買い物しようよ!」 「えっと……」 素直に、うんといえない。それは“汐が店員さんに会いたがっているから”なことも、“マスクがないから嘘をつけない”ことも分かっていたから。 「いやなの?」 汐が不機嫌そうになる。もちろん本気で怒りはしないだろう。そこまで小さな人間じゃないはずだ。あたしの大好きな友達の汐は。 「……ううん。いいよ。でも、汐はいいの?」 「当たり前でしょー」 そういうと、汐は一転して機嫌がよさそうに声音を高くした。 「コンビニにある材料使って料理でもしようよ。ポン酢も使ってさ!」 「……ふふ。了解」 明るくそう話す汐に、あたしは笑ってみせた。その日は、まだ楽しかったのだ。
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