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はじめて分かったの。
あたし、マスクでいることの目的が変わってた。
嘘をつきたいわけでも、自分を守るためでもない。
店員さんに見てほしかったからだ。
途端に頬がカッとなって、熱があがるのが分かる。
きっと今のあたしは顔が赤い。恥ずかしいから。
その気持ちを正面から見てしまったあたしがあたしは恥ずかしい。
「……めん、なさ……」
「陽ちゃん?」
「ご……めん……汐……」
口が震える。それでも汐は私の顔をみるのをやめない。
「何が?」
「あたし……、そのひとの、こと……好きみたい」
「えっ?」
汐の目が丸くなる。
声が小さすぎて店員さんには聞こえていないようで、彼はあたしと汐の顔を交互に見やった。
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