11. 追いかけた背中

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 マスクだけでもわかる。ストレートの夜にまぎれる髪色、華奢な体格、珍しいスーツ姿。先程見送らざるをえなかった背中も。 「……ポンさん」 「!」 名前をそっと呼んでみると、携帯の持ち主は思い切り肩を震わせて携帯電話を草が茂る地面に落とした。かさついた音と共に、彼女が私を見る。 道路を走る車のライトが、ポンさんの驚いたような、困ったような表情を照らして走り去った。 「店員さん……」 彼女はただ呟いて、また私に背中を向けてどこかに行こうとする。思わず私は彼女の左腕を掴んだ。
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