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12. マスクを脱がない女
あたしは、ただ走った。どこをどう行くかなんて考えずに、ただただまっすぐ。そしたら河原道に出た。走るのをやめて、とぼとぼとスピードを落として歩く。
「……あつい」
マスクを外してしまいたい。マスクがなければ違った未来があったかもしれない。それでも、無理だった。マスクは私の大事なパートナーだから。
「……携帯」
携帯が震えたことに気が付き、画面を開くと汐からメールが来ていた。
――明日、ちゃんと話そう。
「……汐……」
あんな別れ方をしたのに、気まずい空気になるのを避けようとする汐は優しいとおもう。が、
――あ、そうそう。店員さんにおいかけてもらったから。
「え?!」
下に続いていた文面に驚く。なぜそうなったのだろう。汐に返信をしようとしたところで、後ろから声がかかった。
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