12. マスクを脱がない女

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等間隔で置かれているなかのひとつに座ると、沈黙が広がった。あたしも彼も、何も話そうとせず夜空を見上げた。 「……ポンさん」 「…………は、い」 店員さんが話しかけてきた。横目で彼を見るが、顔は月のほうを向いている。あたしは小さく返事をした。 「なんで、マスクをしてるんですか?」 「なんで……って……」 「1年前です。あなたが通い始めたのは」 たしかに、あたしはあのコンビニにポン酢があることを知って通い始めた。つい最近のことだった。 「マスクで、いつもポン酢を買う人。いつも目をひかれた。だから覚えました」 「あ、たし……を……?」 「はい。見ていたから、分かります。後ろ姿をみただけで。マスクをしていても、していなくても」
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