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等間隔で置かれているなかのひとつに座ると、沈黙が広がった。あたしも彼も、何も話そうとせず夜空を見上げた。
「……ポンさん」
「…………は、い」
店員さんが話しかけてきた。横目で彼を見るが、顔は月のほうを向いている。あたしは小さく返事をした。
「なんで、マスクをしてるんですか?」
「なんで……って……」
「1年前です。あなたが通い始めたのは」
たしかに、あたしはあのコンビニにポン酢があることを知って通い始めた。つい最近のことだった。
「マスクで、いつもポン酢を買う人。いつも目をひかれた。だから覚えました」
「あ、たし……を……?」
「はい。見ていたから、分かります。後ろ姿をみただけで。マスクをしていても、していなくても」
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