12. マスクを脱がない女

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「ひとつのことを一途に続けるあなたが気になった」 そんなふうにいわれたのは初めてで、あたしは急に泣きたくなった。はじめて誰かにあたしのことを認められた気がした。 汐だけだった、外とのつながりに。店員さんも加わろうとしている。 あたしの世界は変わろうとしている。 「あ、自己紹介がまだでした。私は……、嘉瀬(かせ)(がわ)(しん)といいます。こころ、とかいてしんと読みます」 店員さん改め心さんはそう手を差し出した。あたしは息をのんで彼を見つめる。心さんは穏やかな微笑みを浮かべていた。
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