12. マスクを脱がない女

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あたしも、ゆっくりと左手を顔に近づける。 マスクのひもを耳から外した。 「あた……あたしは、……その……」 ただ名前をいうだけなのに、緊張してしまう。けれど、心さんが頷いて耳を傾けてくれるから言える。 「胡桃(くるみ)(はる)です。太陽の陽で、はる」 とったマスクが膝の上に落ちる。月明かりの下で淡く白い光をまとった。 あたしは右手を彼のてのひらの上にのせる。すると、心さんはあたしの手を少しだけ強く握ってくれた。 「これから、陽さんのことを教えてください」
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