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あたしも、ゆっくりと左手を顔に近づける。
マスクのひもを耳から外した。
「あた……あたしは、……その……」
ただ名前をいうだけなのに、緊張してしまう。けれど、心さんが頷いて耳を傾けてくれるから言える。
「胡桃陽です。太陽の陽で、はる」
とったマスクが膝の上に落ちる。月明かりの下で淡く白い光をまとった。
あたしは右手を彼のてのひらの上にのせる。すると、心さんはあたしの手を少しだけ強く握ってくれた。
「これから、陽さんのことを教えてください」
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