Case book.1-2:崩壊する日常

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「今どこにいるんだ」 『言えない。言ったら多分すぐ見つかるから』 「おい」 『メストルには最悪一日あれば着けると思う。保護施設の別館て、まだあるか?』 「え」  例の事件で保護された子供が『保護施設の別館』と呼ぶ場所は、即ちCUIO本部付近で、一時的にCUIOが借りている建物のことに間違いない。 『じゃあそこで』 「え。お、おい!」  待て、という間もなく通信は切られた。  耳元にはツーツーという電子音が空しく響くばかりだ。 (あの別館……まだあるんだっけか?)  確かにまだ里親の決まらない子供がいる以上、別館はあるだろうとは思う。しかし、建物が変わっていないとは言い切れない。未だあの事件と関わっているとは言え、本部勤務ではないラッセルの持つ情報は確かではないからだ。  それでなくとも、情報量が少なすぎる。けれど、ティオゲネスが、何か切羽詰まった状況にいることだけは理解できた。 (リタが……どうとか言ってたな)  唯一有力な手掛かりと言えば、彼女のことしかない。  しかし、悠長に調べてからと言ってもいられない。  ラッセルは執務室内へ取って返す。  こちらの顔を見るなりキャンキャンと喚きたそうなメリンダに、リタの調査を頼んだ。それが終了次第自分の携帯に連絡をくれるように言うと、彼女の返事も聞かずにリヴァーモア支部の支部長の元へ出張の許可を貰う為、再び執務室を後にした。
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