Case book.1-3:追う者、追われる者

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「分かりました。至急調べて、人物が判明次第、ご連絡致します」 ***  地元の駐在に、子供達の捜査を任せたヒューンは、その足で負傷した部下を連れてクルキネン・シティへと足を延ばした。そこに、CUIOのギールグット州支部がある為だ。  応対に出たギールグット支部長のグッツ=アントン=オーベルライトナーは、既にヒューンの上司であるケイブリエル=クライド=ホイル警部から協力の要請連絡を貰っていると答え、ギールグット全体の通信網を監視する為の監視ルームと何名かの部下を貸し与えてくれた。 「では、何かありましたら私の方へお知らせ下さい」 「ありがとうございます」  監視ルームから立ち去るオーベルライトナーを見送ったところで、携帯端末が震えた。  画面をタップしながら通路へ出る。 「ヒューンだ」 『あ、お疲れ様です。クレーンプットです』 「ご苦労。どうだ、様子は」 『はい。今、テア・ヴィレヂまで来てます』 「テア・ヴィレヂだと?」  テア・ヴィレヂは、トラレス・タウンから、自転車で十五分程の場所にある、小さな村だという。 『「エレン」という少女の身元は、すぐに分かりましたよ。フルネームは、エレン=ヴィルヘルミーナ=クラルヴァイン、十六歳。八歳で両親を亡くして、今は村のマルタン教会付属孤児院に引き取られているそうです』  お喋り好きとしか言えない中年女性が証言したところに拠ると、エレンは白いワンピースに血のような斑模様を付けていたという。それを、トラレス・タウンで聞き込んだ後、テア・ヴィレヂまで足を運んだクレーンプットは、銀灰色の髪を持つ人物について調べたらしい。  銀灰色の髪の人物は少年で、ティオゲネス=ジークムント=ウェザリー、十四歳。二年前にどこかから新しくマルタン教会へ引き取られて来たらしいが、良くも悪くもトラブルメーカー(というより、エレンという少女と一緒にいると何故かトラブルが起きるというのが村人の証言だったという蛇足まで教えてくれた)で、詳しい素性は一切不明だった。
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