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ある日アンディはいつもの酒場に呼び出された。
いつもは陽気な二人が今日に限っては黙りこくって口をひらこうとしない。
呼び出したのは騒ぎたかったからだろうと思っていただけにアンディが不思議に思っていると
パドックが話しだした。
いつもの彼からは考えられない、小さく低い声だった。
「俺たち三人ともあれから仕事も決まらない。ポールさんに今までもらってた金もそろそろそこをつきそうだ。お前らもそうだろ?
俺たちはよくやってた。ポールさんのためにすべての力を出していた。その報いがこれだ。こんなことってあるか?」
二人には返す言葉もなかった。
みんながみんな突然やめさせられたことに大なり小なり、不満を持っていた。
パドックが続ける、「ポールさんは機械なんかが作ったとかいうオルゴールで大儲けだそうだ。いい気なもんだよな」
「そこでだ。俺は今夜工房へ入ろうと思う。」
二人にもようやく彼の言おうとしている事がわかってきた。
「俺達から仕事を奪った機械を壊す。」
使い物にならなくなったら、ポールさんとて俺らの重要さを思い知るだろう。
と言うことだった。
アンディにもパドックのその気持ちは痛いほど分かった。
いままであまりの理不尽さに腹ただしくなったこともあった。
日に日に貧しくなる生活を送る一方でポールのオルゴールが売れている話を何度も耳にした。
恩あるポールさんを困らせる真似はしたくないという一方でどこかで同じ目に合わせてやりたいという感情も渦巻いていた。
反対するものはいなかった。
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