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「最上さん、社会人枠で来たって言いましたけど、やっぱ仕事はキツかったんですか?」
「あ、いえ……そうではないんですけど、でも、そうなのかな?」
「面白いッスね! 最上さん、下の名前はなんです? 下の名前で呼んじゃってイイすか?」
何が面白いのか分からなかったけど、社会人枠で入って来たわたしをあっさりと受け入れてくれたのは、意外だったし嬉しい気持ちになった。
下の名前で呼ばれた所で、何が変わるのかは分からないけれどそういうのはすでに、入社式の後の飲み会でおじさんたちに言われていたことだったから、躊躇う意味なんて失われていた。
「瑞(みずほ)です」
わたしの名前を聞いて、よく分からない位にテンションを上げている彼の名前は、須郷泰史(すごうたいし)と名乗り、同じく下の名前で呼んで欲しいと言われて正直、戸惑ってしまった。
「あの、他の人って……?」
「もちろん、いますよ。女子もいるんで、そこは安心しちゃって平気っす!」
何が安心なのか分からないけど、みんな年下だろうし目の前の彼みたく、気さくには話さないんじゃないのかな。そう思っていたのに、そんな思いはすぐに覆されてしまうことになるとは思っていなかった。
「こんにちは~」
「ちぃーす! お?」
少しして、メンバーなのかちらほらと集まりだして来た。部屋の中にいるわたしにすぐ気付いて、軽く頭を下げる程度だったけれど、確かに驚かれるようなことは無かった。
「こちら、今日からメンバー入りの、みずほ! みんな、よろしく~」
呼び捨て!? 実のところ、さすがに呼び捨てで呼ばれたことのないわたしは、すぐに否定形の言葉を口にしながら、自分でもよく分からないくらいのジェスチャーをしてしまった。
「ち、違いますから!」
「何か、泰史の言葉を拒否ってるけど? 勝手に呼んじゃってる系?」
「いや、合ってるはずだけど。間違ってた?」
「そ、そうじゃなくて、名前はそうだけど、あの……そういう関係じゃ無いので」
気持ちだけが先行してしまったのか、わたしは思いきり早とちりと勘違いと、意識してしまっていた。あぁ、やっぱり、人と会って話をしないと免疫も失われてしまうのかな。すごく恥ずかしかった。
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