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3.優しさの受け入れ方
現役の学生の誘いを黙って受けるべきなのだろうか。多分わたしは、こういう所が臆病で自己アピールをしないから、友達にもなれず親しくもなれなかったんだ。少なくとも今まではそうだった。
「わたしが参加してもいいの?」
「遠慮しなくていいよ。だって、もうメンバーじゃん? だから確かめなくていいよ」
「う、うん、ごめん」
積極的に話しかけて来るよしのくんは、はっきりしている性格みたいだった。わたしの迷いは彼のおかげで無くなったと言ってもいいかもしれない。
異文化交流が果たして本当に行われるのかは分からないけれど、わたしが加入した記念という名目でみんなと一緒に、展望台へ行くことになった。
「みずほさん、高いところ平気ですか?」
「たぶん、平気」
「天気もいいので、みんなで行きますよ」
「あ、ありがとう、ナツ」
「いえいえ」
やはり誰か一人でも女子がいるってだけで、安心感が違う気がする。ナツはわたしよりも一つ下くらい。それなのに、しっかりしていてサバサバした感じだから、すごく落ち着ける気がした。
少ない人数だからなのかもしれないけれど、男女それぞれの個性が分かりやすく、嫌な感じを受けることは無かった。それとも、単にわたしだけが一年という短い時間の中でも、自分の個性を消してきたのだろうか。
言われるがまま、親の紹介で入った会社。そこには楽しみなんてことが無くて、変化の無い毎日を過ごしていた。何の目標、目的も無かったと言えばそれまでだったけれど、自分から何かを探そうなんて気は全くと言っていいほど起きなかった。
そんな自分を変えたくて、ハンデを付けて大学に入ったのに3年も経ってしまうなんて思わなかった。せめて、就活に勤しまないわたしは、サークル活動に勤しみたい。そうしたら何かのきっかけで、変わり映えのしなかった毎日に、劇的な変化をもたらすのかもしれない。
「みずほ、お金」
「え?」
「だからー、展望台のお金出して」
「あっ、そっか。ご、ごめん」
「いちいち謝らない。気を遣うのも禁止な!」
「ご、ごめ……あ、ありがと、よしのくん」
あれ、もしかして気に障ってる? 世間の何もかもに興味も関心も持たなかったわたしは、まともに男子とのやり取りも出来なくなっているのだろうか。こんなことでは変われない。だから、まずは笑顔を出して行こう。
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