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「目が覚めたかい?」
髭を少し生やした長髪のおじさんが僕に話し掛けている。
妙な服を着ている。
古代ギリシャ人みたいな、白い布の服。
「今日から君の名前はRalph(ラルフ)だ。わからない事は何でも聞きなさい」
僕は人間になったの………?
鏡に映る自分は白髪に黒いメッシュが入っていた。
18歳くらいの外見。
「君はこれから………」
目が覚めた。
続きが聞きたかった。
もう一度目を閉じた。
でも、駄目だった。
鳴り響く目覚まし時計に起こされてしまった。
いつもと同じ、朝。
家族との会話。
通学路。
でも、いつもと違った。
アイツがいない。
沓澤由紀が。
探した。
出席簿、机、ロッカー……
全てからアイツの痕跡がなくなっていた。
探さないで。また必ず会えるから。
昨日の言葉が蘇る。
友達やクラスメイトに聞いても誰も覚えてなかった。
アイツの一つ下の弟に聞いても、覚えてなかった。
兄などいない。と。
忘却。
と言った方が正しいのかな。
由紀はこの世から存在が消えてしまったのだ。
そんな変化など無かったように日常は過ぎて行く。
夜にはまた。
夢を見る。
「よろしく。Ralph(ラルフ)。俺は雪(ユキ)!」
つづく
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