消えた雪

3/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「目が覚めたかい?」 髭を少し生やした長髪のおじさんが僕に話し掛けている。 妙な服を着ている。 古代ギリシャ人みたいな、白い布の服。 「今日から君の名前はRalph(ラルフ)だ。わからない事は何でも聞きなさい」 僕は人間になったの………? 鏡に映る自分は白髪に黒いメッシュが入っていた。 18歳くらいの外見。 「君はこれから………」 目が覚めた。 続きが聞きたかった。 もう一度目を閉じた。 でも、駄目だった。 鳴り響く目覚まし時計に起こされてしまった。 いつもと同じ、朝。 家族との会話。 通学路。 でも、いつもと違った。 アイツがいない。 沓澤由紀が。 探した。 出席簿、机、ロッカー…… 全てからアイツの痕跡がなくなっていた。 探さないで。また必ず会えるから。 昨日の言葉が蘇る。 友達やクラスメイトに聞いても誰も覚えてなかった。 アイツの一つ下の弟に聞いても、覚えてなかった。 兄などいない。と。 忘却。 と言った方が正しいのかな。 由紀はこの世から存在が消えてしまったのだ。 そんな変化など無かったように日常は過ぎて行く。 夜にはまた。 夢を見る。 「よろしく。Ralph(ラルフ)。俺は雪(ユキ)!」                      つづく
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!